電気科 課題研究発表会2024
電気科では、「課題研究」という、大学の卒業研究にあたる授業を3年生に設定しています。
以前は、3年生になってからテーマを選択していたのですが、今年の3年生からは、2年生の3学期からテーマを選定し、クラウド掲示板Padletにより、研究班やクラス内で議論を進めてきました。
3年生に進級した後、2024年4月から2025年1月まで、AIや文献、論文、YouTubeを駆使して1年間研究を進めてきました。時は意見が合わずに険悪な雰囲気になることもありますが、それも含めて「課題研究」です。
発表前日の1月23日夜遅くまで、「スロットマシンから異音がする!」と粘りに粘って調整をする姿もあり、今年度も楽しませて頂きました。
2024年度 電気科課題研究テーマ
オムニホイールを制御するモータードライバの製作
GeminiAPIを用いた対話型AIの制作
Processing とmicro:bitを用いたプロジェクションマッピングの制作
人感センサーを使った監視カメラの製作
センサーを用いた速度計測機の製作
自作マイク・スピーカーを用いた通信設備の研究
マイコンを用いたスロットゲームの製作
自転車のワイヤレスブレーキの製作
プラレールの架線集電駆動化による電車の研究
Raspberry PI4を用いた出席管理システムの制作
AruduinoとLEDを用いた現代版ニキシー管の研究
CO2センサを使用した二酸化炭素濃度計の製作
安全な電動キックボードの製作
らせん水車の研究
「選ぶ力を育む」研究発表会
1月24日(金)。高校生活最後の6時間授業の日に、いよいよ課題研究発表会を迎えます。
電気科の発表会は、ちょっと変わっています。それは下級生全員が、すべての研究発表を見学しないのです。
1年生と2年生は、前々日までにクラウドシステムで配付された資料を元に、「A組から2つの班」、「B組から2つの班」を選択して、自分が希望する研究だけを見学します。14班ありますので、他の10班は見られません。ただし、電気科ではクラウドシステム上で研究資料を見ることが出来ます。さらにいえば、過去5年間の研究資料も自由に見ることが出来ます。
ですから、発表の見学も「自分の意志で選択」、「限られた選択肢の中で選びきる力」、「資料だけで分かるのか、質問もしたいのかという選択」という様々な視点で「自分事(じぶんごと)」として捕らえて欲しいという思いが、電気科にあるからです。このような経験が、就職活動にも生きてきます。
当日は、30名近い3年生の保護者の皆様、45社90名を超える内定企業の皆様にもご参加頂いた「ビッグイベント」となりました。
課題研究を再定義 過程より結果!
工業高校の課題研究は「ものづくり」や「ICT」の要素が多分に含まれ、非常に面白い研究がたくさん有ります。
その一方、「感性に頼り過ぎる」、「興味関心だけで研究する」、「データや分析結果に基づかない」、「完成しない」、「失敗してもそのまま」という研究も少なくありません。それは、【結果より過程が大切】ということに、こだわりすぎている部分があるからです。
そこで、今年度の3年生は前述のように2年生から研究を始め、スケジュールとチームの力量から逆算して研究を進めました。研究過程をクラス全員に共有させ様々な視点で研究の状況をチェック。研究の効率化のため、生成AIを積極的に活用して行きました。【過程より結果!】です。
学科としても、これまでの6倍以上の出力速度を誇るAI対応の3Dプリンタを投入、彼らの研究をバックアップしました。
失敗や想定した結果にたどり着かないことも沢山あったのですが、その殆どが説明できるという、すばらしい研究となりました。
当日のレポート
研究成果のほとんどがクラウドシステムで共有されるため、実作業を伴わないときは、放課後は家に帰ってそれぞれで研究。電気科らしい取り組みです。帰ってしまっても、作業が進んでいればOKです。
発表資料は2日前に下級生や企業に配付済み。研究結果や過程も知っています。ですから、電子黒板やプロジェクターも使うことは使いますが、それは発表の一部分。各班ごとに、リアルだからこそ伝わる10分間を演出しました。
興味のある下級生や企業が来るので、双方とも真剣です。下級生は質問するつもりで見学をしていますので気が抜けません。
最初の一歩は興味関心ですが、「実用性」、「安全性」を研究に取り入れていきます。電気科の学びは「数学」、「理科」、「情報」に加えて「法律」です。
常に「法律的にはどうなの?」という質問があります。
毎年、90名近くの企業の方が来校します。中には非常に実用的で絶賛される研究もあります。「教員と生徒」、「企業の方」はかなり視点が異なります。電気科が、これだけ多くの企業にお声かけする理由がここにあります。
研究発表が終わると、生徒が突然「お父さんちょっと来て」と言いました。何事かと思うと、「お父さんのために作ったものがあるから見てほしい」と言って、特別なプレゼンを行っていました。
本当に素晴らしい大人に成長してくれたと関心しました。
2、3年に一度、「こんなこと出来るの?」、「これ作ったの?」という研究に出会います。レーザー加工機、3Dプリンタ、電子回路の実装、プログラミング、ICT、とんでもない研究への熱量というすべての要素が詰まった、4輪オムニホイール無人搬送車。かなり見応えがありました。
電気科では、「明日までにGoogleスライド作っておいて!」とか、「AdobeExpressで○○作っておいて、期限明後日ね!」とか、「今日、全員で発表ね!よろしく」という無茶振りが極めて多い学科です。それは、「生徒に、それを満たす力がある」からです。
今年の課題研究は、生成AIを全面的に取り入れています。授業内で、毎日のように生成AIを使っていますので、自分たちの考えをブラッシュアップ、壁打ち、ソースコード生成などはお手の物。「Webで検索」は純粋に調べ物、研究はAIという使い分けがしっかりと出来ていました。
毎年、毎年、粘り強さも出てきました。電気科にICTが導入する前までは、学校に残って時間を掛ける!ということが課題研究でしたが、iPadやクラウドシステムの導入により、自分が空いた時間に作業を行い、クラウドで共有、学校では対面で共通理解を得るという、まさに「在宅勤務」状態でした。様々な見方もあるとは思いますが、これが電気科なのです。
今年は、「それって何と比較したの」、「それやって具体的に何がわかるの」、「それは君の主観でしょ。下級生はなんて言ってる」という問いを、各班に投げかけることもありました。それを「ムカっ」とせずに、それなら調べてみるか?比較してみるか?と肯定的に受け入れてくれた班が多く見受けられました。「批判受け入れ能力」も育まれました。
上記にように、下級生も企業もすべての発表を聞きません。自分が実際にやるのですから、興味の無い話を無理矢理聞かされるよりも、興味のあるところを聞いて、質問をした方が自分のためになります。企業の研究発表、大学や学会のポスターセッションも同様でしょう。電気科は常に「自分事(じぶんごと)」を大切にしています。
そして、その「自分事(じぶんごと)」は、自分の都合や勝手ではなく、さまざまなことを自分自身に置き換え、他人の気持ちや考え、痛みも共有していくという事も学んで欲しいと考えています。
発表当日は、高校生最後の平常6時間授業。多くの保護者がスマートフォンやビデオカメラで撮影をされていました。内定企業に、保護者が会う時間も作っているため、就職に関して保護者の不安を取り除くという効果も想定しています。